年の瀬も迫った2016年12月
我々は一軒のゴミ屋敷を訪ねた
建物はゴミで埋め尽くされ
その奥にあるという玄関は見ることができない
家のあるじは留守だろうか
辺りを見回す
次の瞬間
あまりにも壮絶過ぎる光景に我々は言葉を失い二度見三度見五度見した
どうやらここが
この家の主人の寝床のようだ
恐る恐る声を掛けてみる
男性はムクッと起き上がり
「何?誰?何?誰?何しに来たの?ちょっと待ってトイレに行ってくる」
そう言うと男性は慣れた様子で路上に立ちションをし始めた
もちろん手は洗わずに戻ってきた男性は腰をおろし遠くを見つめ穏やかな表情で
聞いてないのに我々に語り始めた
岡本太郎に憧れて
アルミ缶やペットボトルでオブジェを作っているうちに
つかなくていい芸術心に火がついてしまい
近所から鉄やアルミや木屑や紙や段ボール等を回収に行っては積み上げていった
芸術は爆発される事なく
やがて
ゴミ屋敷となってしまったようだ
最初は我々を警戒していたが
徐々に会話の途中で笑顔を見せるようになった
すると突然頼んでもいないのに
自慢気に愛車を見せてくれた
エンジンはかからず
ブーンブーンと口で音を出して無邪気にこちらを見てくる
悪い人では無さそうだ
スタッフの一人がたまたま持っていた敷布団を手渡した
久しぶりの布団だったのだろう
男性は懐かしそうに布団に横たわった
「布団だっしゅ……疲れたなぁ 僕は疲れたんだ なんだかとても眠いんだ……布団だしゅ……」
取材協力
有限会社高山商店