あれは小学2年か3年いや4年かもしくは5年か6年だったか学校 に行く途中
家の近くで自分の進行方向から歩いてくる一人のおばさんに会った
それはごくごく自然の光景である
しかし事態は自然から不自然へと変わった
なんと学校の近くでまたそのおばさんに会ったのである
あれは幻だったのかイリュージョンだったのか
引田天功だったのか
誰もが一度は見たことがあるであろう幻
そして誰もが憧れる幻
我々はこの伊那市の昼時に幻に会えるという情報を入手し現地へと軽自動車で向かった
場所は「櫓」 PCが簡単に変換してくれるが書くのも読むのも困難な「やぐら」
本当にこの場所で幽幻道士に会えるのだろうか
我々は席に着き幻を待った
そして我々が呪文「キョウノテイショククダサイ」を唱えてから数分後
定食道士によって我々の前に幻が置かれた
これが1年に一度だけこの店で会える
幻のメニュー「牛タンシチュー定食」
店内は伊那市なのにランチなのに伊那市なのに
予約で満席
予約をせずに来店したお客が肩を落としながら次々に帰っていく
我々はそれを満面の笑みで送り出してあげる事しかできなかった
焼肉で最初に焼かれることの多い牛タン
あの牛タンが分厚く切られゴロゴロと寝そべっているハンパない幻ぶり
幻が私の喉元を通りすぎ胃袋に侵入していく
私の胃袋の中でイリュージョンが始まる
ウマイ ナイステイスト過ぎる
私は幻覚を見ているかのように無心でスプーンを何度も口に運ぶ作業を繰 り返した
牛タンシチュー定食にはライス&パンが付く
ライスorパンではないのだ
幻ではなく現実に両方付くのだ
フランスパンで皿を綺麗にクリーニングしながら最後の別れを告げる
ふと見ると相棒もキョンシーのような
恐ろしい表情でフランスパンを無心でかじっていた
気が付くと私の目の前から牛タンシチューが消えていた
誰かが食べてしまったのか
いや本当に幻だったのだろうか